2016年7月14日木曜日

似合わない女 29+19days

自転車で職場に向かっていた。
長くて急な坂道を下ると、
べたっとした風が吹いた。

急な坂と急な階段が、
大きな道路と道路を繋いでて、
そこに新しい家と古い家が、
ぎゅうぎゅうに建てられている。
坂の上からは、
遠くに大きなイオンとか新しい高層マンションとかが見えて、
坂の途中に綺麗な校舎の学校がある。

夕暮れ時、
子連れのお母さんやおばちゃんたちが、
そこかしこで井戸端会議をする。

私の田舎は車社会で、
多分そのせいで、
道端でおしゃべりする習慣があまり根付いてなくて、
むしろそういうのは、
ヤンキーがするものだと思っているくらいで、
なんだか見慣れない。

私はスーツを着て自転車を漕ぐ。
こんな格好で自転車に乗るなんて、
18歳までの私なら想像もできない。
風が前髪を揺らして、悪くない気分。

ここでは、自転車が便利で、
自転車があれば事足りたりする。
私の地元は車がないとどこにもいけなくて、
でも、車があればどこにでも行ける。

私は、自転車を漕ぎながら、
そして、
下り坂でゆるくブレーキを掛けながら、
つくづく思う。

私はこの町に似合っていない。

私だけが、
この地域に根ざせていなくて、
私だけが、
この地域に愛着がないような。

ここに住んでいる人は、
きっとみんな、
ここでの生活、ここでのライフスタイルが、
そこそこ気に入っているんだろうなとか、
満足しているんだろうなとか、
そんなふうに思い込んでいる私にとって、
この町での生活をあまり愛せない私は、
なんだか申し訳ない気持ちになる。

これは、野心とかの問題じゃなくて、
もっと他にいいところがあるんじゃないか、
とか、そういう自分探しに近い問題でもなくて、
じゃあ、この心許なさはなんだろうか。

地元での生活が好きだったわけではない。
それしか知らなかっただけだ。
上京して、何度か引越しもした。
どの町も、好きな部分もあったけど、
この町は、私の生活の全てではない、
といつも思っていた。

もしも、家を買うなら、
と想像するとき、
掛かるお金のことばかりを考えてしまうのだけど、
結局、誰とどんな風に暮らすのか決めないことには、
家は買えないということに気づいたりする。
1人で、一生を過ごすならば、
私はどこに行くのだろうか。
1人で生きる覚悟ができないと、
それすら決められない。

生きる場所は、
生き方が反映される。

私がこの町に似合わないのは、
この町なりの暮らしが、
私には似合っていないからなのだろう。

きっと、そう遠くはないいつか、
私はまた引越しをするだろう。
そのとき、私は、
何を基準に住む場所を決めるのだろう。
私はその場所を、
そして、そこでの生活を愛せるだろうか。




根無し草って、
いい表現だなあ、と思う。
誰かこの根無し草を捕まえてはくれないだろうか。








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